愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「ねーえ涼ちゃん、僕の紹介はまだぁ?」


なかなか自分が紹介されず、待ちきれなくなった男が私たちのそばまでやってきた。

男というより、まだまだ幼くてかわいい“男の子”という表現が合っているかもしれない。


そんな彼は女顔負けのかわいい顔立ちをしており、長い前髪はピンで留めている。


「初めまして、君が愛佳ちゃんだよね!」
「…え、名前……」


「愛佳ちゃんの話は聞いてたよ!本当に綺麗な子だね〜!肌のケアには何使ってる?僕と気が合いそう!

あ、僕は光希(みつき)ね、光に希望の希で…」


やけに距離が近いな。
私に懐くというより、女友達の感覚で話しかけてくる。


「光希、あまり川上さんを困らせないであげてほしいな」

「…っ」


さすがの私も本気で反応に困っていると、瀬野に肩を抱き寄せられてしまう。

途端に騒がしくなる地下室。
変に誤解が生まれそうだ。

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