愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



思わず声のした方に視線を向けると、先ほどからヘッドフォンを耳に当てながらゲームをしている男がひとり、視界に入る。


「君は、川上愛佳…覚えてる、瀬野くんに君のことを調べろって頼まれたから…」

「……え」

「彼はコンピューターの扱いが得意な(つばさ)
情報収集に翼の力は欠かせないんだ」


翼というこの男が、私の情報を調べたようだ。
つまりこいつのせいで私は瀬野に弱みを握られて───


いけない、いけない。
怒りの感情を汲み取られては困る。


「全員俺の仲間だから大丈夫、怖がらなくていいからね」

「う、うん…」

「だからみんな、この子に危害を加えられないよう全力で守ってほしい」


瀬野の一言で地下室に響き渡るのは大きな返事の声。

こんなにも多くの人たちが瀬野に仕えているのだ。


「それで?
瀬野と、その…川上さんはどっちに襲われたんだ?」


ここにきてようやく幹部である悠真という男の言葉で昨日の話になる。


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