愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「確かになぁ、ちょっとややこしいし。
三つ巴ってわけじゃねぇからな」


副総長の陽翔という男もうんうんと頷いている。
ああ、面倒くさい今すぐ帰りたい。


「じゃあまず愛佳ちゃんに問題!」
「も、問題…?」

「僕たちの族名は何でしょーか!」


知るか、そんなの。
聞いたこともない。

まず難しい単語を聞き取ること自体面倒である。



「あれ、もしかして涼ちゃん言ってないの?」
「言った記憶はないかなぁ」

「もー、何も知らない愛佳ちゃんが可哀想だよ!」


いや、別に知りたくもないけれど。
とりあえず苦笑いを浮かべておく。


「僕たちは仁蘭(じんらん)っていう族名だよ!
かっこいいでしょ?」

「じん、らん…」

「そう!仁蘭のトップが涼ちゃんね!昨日も多分、涼ちゃんがすぐ敵を倒したんじゃないかな」

「う、うん…すごく強かった…」


わざと怯えた表情をすれば、光希くんは心配そうな表情を浮かべた。

「やっぱり怖かったよね…大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ…ごめんね」

「ううん、愛佳ちゃんが謝る必要はないよ。
ねぇ涼ちゃん、やっぱり先に雷霆を潰そうよ」

「つ、つぶ…!?」


かわいい顔をして、さらっと怖いことを口にした光希くん。


「潰すのはダメだよ、俺たちの目的じゃないからね。それに向こうは手を組んでるから下手な動きはできない」

「むー…愛佳ちゃんを怖がらせた奴らなのに?」
「感情任せに動いたら負けるよ」


潰すだの、目的だの、手を組むだの。
何も知らない私は理解できそうにない。

< 153 / 600 >

この作品をシェア

pagetop