愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「確かになぁ、ちょっとややこしいし。
三つ巴ってわけじゃねぇからな」
副総長の陽翔という男もうんうんと頷いている。
ああ、面倒くさい今すぐ帰りたい。
「じゃあまず愛佳ちゃんに問題!」
「も、問題…?」
「僕たちの族名は何でしょーか!」
知るか、そんなの。
聞いたこともない。
まず難しい単語を聞き取ること自体面倒である。
「あれ、もしかして涼ちゃん言ってないの?」
「言った記憶はないかなぁ」
「もー、何も知らない愛佳ちゃんが可哀想だよ!」
いや、別に知りたくもないけれど。
とりあえず苦笑いを浮かべておく。
「僕たちは仁蘭っていう族名だよ!
かっこいいでしょ?」
「じん、らん…」
「そう!仁蘭のトップが涼ちゃんね!昨日も多分、涼ちゃんがすぐ敵を倒したんじゃないかな」
「う、うん…すごく強かった…」
わざと怯えた表情をすれば、光希くんは心配そうな表情を浮かべた。
「やっぱり怖かったよね…大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ…ごめんね」
「ううん、愛佳ちゃんが謝る必要はないよ。
ねぇ涼ちゃん、やっぱり先に雷霆を潰そうよ」
「つ、つぶ…!?」
かわいい顔をして、さらっと怖いことを口にした光希くん。
「潰すのはダメだよ、俺たちの目的じゃないからね。それに向こうは手を組んでるから下手な動きはできない」
「むー…愛佳ちゃんを怖がらせた奴らなのに?」
「感情任せに動いたら負けるよ」
潰すだの、目的だの、手を組むだの。
何も知らない私は理解できそうにない。