愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「雷霆はしばらく注意した方が良さそうだな」

悠真という男がそう口にして、緊張感が地下室に漂う中───


突然地下室の入り口である大きな扉が開けられる音がした。


「涼介…!」
「うわ、来たよ」


さらに女の子の声が地下室に響き渡り、光希くんが嫌そうな顔を浮かべたのを私は見逃さなかった。

恐らく瀬野の言っていた“難しい人”だろうと。


さりげなく瀬野から離れ、扉に視線を向けると。

光希くんのようなかわいいタイプの女の子が、こちらに向かって走っていた。


「涼介、奇襲に遭ったってほんと…!?
大丈夫!?」


瀬野の前で立ち止まったかと思うと、心配そうに見つめている。

ふたりは恋人同士なのだろうか。


いや、恋人だとしたら私をここに連れてくるわけないだろう。


「俺は大丈夫だよ、莉乃(りの)
とりあえず落ち着こうか」

「良かったぁ…!」


瀬野が笑ったかと思うと、安心したように息を吐いた彼女は大胆にも彼に抱きついて。


「愛佳ちゃん、安心してね。
ふたりは恋人でも何でもないから」

「う、うん…?」


別にふたりが恋人であろうが私に関係ないというのに。

やっぱり光希くんは恋人同士だと誤解しているようだ。

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