愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
それにしても───
「本当に奇襲だって聞いた時、莉乃ねすごく心配したんだよ」
「ん、心配させてごめんね。
でも大丈夫だから」
「うん、本当に良かった…」
まるで恋人のようなやりとり。
ふたりの関係が恋人でないにしろ、少しだけ気になってしまうのは当然のことだろうか。
瀬野が莉乃と呼ばれた女の子を落ち着かせたところで、ようやく彼女が私を視界に入れた。
「……あなたは誰?」
まるで“邪魔もの”とでも言いたげな瞳。
瀬野と私、ふたりへの態度の違いが明確だった。
「あ、私は…」
「川上さんっていう“クラスメイト”だよ」
「クラスメイト…?」
「そう。昨日の奇襲に巻き込んじゃって」
「じゃあクラスメイトに涼介の裏がバレちゃったの?」
「まあそうなるね」
クラスメイト。
確かに私たちは“クラスメイト”だったけれど。
私に触れていいのは瀬野だけだって言ったくせに、クラスメイトなんだと。
別にそれ以上の言葉が欲しいわけではないのだが。
「ふーん、クラスメイト…」
彼女はじっと私を見つめてくる。
かわいい顔をしている彼女は甘やかされながら育ってきたのだろうか。