愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「あ、えっと…莉乃ちゃん、だよね?
私は川上愛佳って…」

「気安く名前で呼ばないでくれる?」
「……っ」


それは冷たい声だった。

ひどく突き放すようなその言葉に、思わず『は?』と言ってしまいそうになる。


「うっわあり得ない。
莉乃ちゃん、誰にそんな口きいて…」

「光希。少し言葉が悪いよ」

「だって…うー、本当に涼ちゃんっていつも莉乃ちゃんの味方ばっかり!愛佳ちゃんがかわいそうだよ…あと僕も」

すかさず光希くんが間に入ってくれようとしたけれど、それを瀬野が止める。


「だって莉乃は涼介のお気に入りなんだもん…!だから一番大切にされないとダメなの!莉乃が一番なんだよ」


脳内お花畑女子だな、なんて思ってしまった自分は性悪女だろうか。

そもそも一番にこだわる理由がわからない。


「これまで涼介に近づいてきた女の中でねぇ、莉乃を見下した人たちはみーんな涼介が莉乃を守るために関係を切ってくれたの」

「は?それはただ涼ちゃんが莉乃ちゃんに甘いだけだから」

「甘やかされてるんだよ、やっぱり莉乃は涼介のお気に入り!だからあなたも涼介に関係を切られる前に、自ら去っていった方がいいと思うよ?」


思わず笑みが零れ落ちそうになる。
私だって関係を切りたいけれど、瀬野がそれを許さないのだ。

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