愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「愛佳ちゃん…君って本当にいい子すぎない!?
純粋すぎて逆に怖いよ僕…!」
「こんな天使のような人間、存在したんだなぁ」
光希くんだけでなく、陽翔という男も私に対して感心している様子。
「川上さんは誰にも渡さないよ」
「…っ」
甘い声に胸が高鳴ってしまう。
本当に瀬野は私を乱すようなことばかり口にする。
「なんだかんだ涼ちゃんも遊び人だけどさぁ…本命の子を見つけちゃったって感じ?」
「うん、そうだね。
この子は俺の本命の相手だよ」
冗談だとわかっているのに惑わされる。
私の心って本当に弱い。
「あっ、愛佳ちゃんかわい〜!
照れてるよ涼ちゃん」
いちいち指摘しないでほしい。
何せこれは“演技”ではないのだ。
きっとそれも瀬野に伝わってることだろう。
本当に最悪だ。
「この子は照れ症だからね。
本当にかわいいなぁ」
「…っ」
愛でるように頬を撫でてくるから、余計に熱が帯びる。
ダメ、本当に。
いっそのこと裏を見せてやろうかと思ってしまう。
「せ、瀬野く…も、帰ろ…?」
弱々しい声になってしまう。
話すのも精一杯なのだ。
「さっき莉乃が帰ったばかりだから、まだダメだよ」
それなのに瀬野は私の反応を楽しんで。
上手いこと言いながらまだ私を苛める。
「何か見せつけられてるみてぇだな」
「諦めろ陽翔、お前は騙される運命なんだから」
「うっせぇな!
そういう悠真は女と関係なんてないだろ!」
「当たり前だ、俺は勉強第一だからな」
ワイワイと騒がしくなる地下室で、私の精神は徐々に削られていった。