愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
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本当に長かった。
時間にしてみれば1,2時間だったのだが、体感時間はその倍以上だ。
瀬野に好き勝手やられる中で、自分を偽るのは相当な精神力が必要だということを学んだ。
「川上さん、そんなに機嫌を損ねないでよ」
「本当にあんたって人間、大っ嫌い」
「だって俺のモノだって言っておかないと、みんな川上さんを気に入って狙うだろうから」
「あんたのモノになるくらいなら周りに狙われた方がマシね」
どうせ誰のことも好きにならない自信しかないのだから。
自分のペースを乱してくる瀬野は嫌いだ。
「その言葉は聞き捨てならないな、川上さん」
「…っ、うっさい」
地上に出た私たちはバイクを停めた場所に向かう。
その中で、瀬野はふと私の言葉に対して思うことがあったようだ。
少し声のトーンが落ちた気がする。
別に瀬野の機嫌をとろうだなんて思っていないからいいのだけれど。
「俺以外の男に狙われた方が嬉しいんだ?」
「…当たり前じゃない」
「俺じゃなかったら滅茶苦茶にされてるかもしれないのに?」
私の腰に手をまわして、離れないようにさせてから。
そんな風に意地の悪い質問を投げかけてくる。
「そんなのわからないでしょ…」
「んー、そんな風に言われるならあの時ギリギリまで助けなかったら良かった」
「は…?」
「あの日、川上さんが裏通りで男ふたりに絡まれた時。ホテル連れ込まれて襲われかけてる時に助けたら、もっと男の危なさをわかってくれてたかなぁ。もしかしたら俺への見方も変わってたかもしれないし」
何を言い出すのかと思えば、そんな最低なことをさらっと言ってのける瀬野。
本当に信じられない。