愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「川上さんに手を出す奴は仲間でも許さないよ。
誰にも触れさせたくない」
「私は信じない」
「信じなくても良いよ。俺が勝手にそうするから」
私をバイクの後ろに乗せて、優しい微笑みを向けられる。
胸がギュッと締め付けられるような感覚になったのは、きっと気のせい。
「とりあえずお詫びとして何か川上さんに奢らせてよ。何が食べたい?」
やっぱりそんな風に上手いこと言って。
私と一緒に出かけようと誘ってくる。
「……甘いの」
「ん、なんて?もう一回俺に教えて」
「…っ、甘いの食べたい。
今日はたくさんイライラしたから糖分欲しいの」
「ふはっ、りょうかい。
甘いものね」
イライラなんて単なる言い訳に過ぎなくて。
結局は瀬野とふたりで出かけることに了承したのだ。
やっぱり瀬野の思い通りになってしまう自分に悔しいと思いつつも、今回も逆らえなかった。