愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「昨日にでもクラスの男子誘って、そこに入れてもらえば良かった。今からでも間に合うかな?」
「ちょっとやめてよ、絶対に嫌だからね」
「んー、悲しいなぁ…」
瀬野なら本気でやりかねないため、止めるけれど。
本人は曖昧な返事しかしない。
「ねぇ、ちゃんと話聞いてる?」
「じゃあ後で川上さんのこと触れてもいい?」
「……は?」
どうしてそうなる。
瀬野の考えには到底賛同できそうにない。
「時間が許す限り、川上さんを抱きしめたいな」
「うん、無理です」
満面の笑みを浮かべてきたのだが、ここはバッサリと断る。
瀬野のことだ、抱きしめるだけで終わるはずがない。
「少しぐらい許して欲しいなぁ。こう見えて川上さんに触れないよう我慢してるんだから」
「寝る時に私を抱きしめてるでしょ。抱き枕かってぐらい。それで十分じゃない」
私に触れていいのは寝る時だけ。
それも抱き枕要員である。
だからこそ許しているのだが、それ以外は絶対に許さないつもりだ。