愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「…んっ」
少しきつめのキスに、思わず目を閉じる。
受け入れてしまっているのもいいところ。
「余裕ない表情、本当にたまらないよ」
「…ふ」
キスを終えると、指で私の唇をなぞって。
頬に熱が帯びるのがわかる。
どうしようか。
また目の前の男に狂わされる。
「クセになりそう」
「…っ、もう満足したでしょ」
流されそうになったけれど、自分を見失わないようにして瀬野から離れる。
ここまで好き勝手されてから離れたため、すでに遅いのだけれど。
「えー、川上さんが離れちゃったよ」
「これ以上触れたら瀬野の私物全部外に放り投げるから」
「ふはっ、怖いこと言うね」
先ほどのキスで満足したのだろう、瀬野がニコニコ笑っていて。
一方の私はドキドキしているのだから悔しい。
これ以上瀬野といるだけでも乱されると思った私は、逃げるようにして家を後にした。