愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「…んっ」

少しきつめのキスに、思わず目を閉じる。
受け入れてしまっているのもいいところ。


「余裕ない表情、本当にたまらないよ」
「…ふ」


キスを終えると、指で私の唇をなぞって。
頬に熱が帯びるのがわかる。

どうしようか。
また目の前の男に狂わされる。



「クセになりそう」
「…っ、もう満足したでしょ」


流されそうになったけれど、自分を見失わないようにして瀬野から離れる。

ここまで好き勝手されてから離れたため、すでに遅いのだけれど。


「えー、川上さんが離れちゃったよ」
「これ以上触れたら瀬野の私物全部外に放り投げるから」

「ふはっ、怖いこと言うね」


先ほどのキスで満足したのだろう、瀬野がニコニコ笑っていて。

一方の私はドキドキしているのだから悔しい。


これ以上瀬野といるだけでも乱されると思った私は、逃げるようにして家を後にした。

< 175 / 600 >

この作品をシェア

pagetop