愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
一瞬瀬野に連絡しようか悩んだけれど、もしそれで勘違いだったら恥ずかしいためやめる。
『俺に構って欲しかったの?』なんて、瀬野なら言いかねない。
ここは大人しく映画を観て、その後すぐに帰ろうと心に決める。
「すっごくキュンキュンしたね!」
「あそこのシーンとかやばくなかった!?」
映画が終わり、外に出るなり興奮した様子で話す3人。
私も適当に頷いておくけれど、内容などほとんど頭に残っていない。
甘ったるい映画だったような気はする。
「この後どうする?」
「映画の話をしながら夜ご飯、食べたいね…!」
3人とも、この後も一緒にいることを希望しているけれど。
もし何かあってからじゃ遅いため、ここは断っておく。
「ごめん、今日は早く帰らないといけなくて…私はここで失礼するね」
申し訳なさそうに言ってもなお、3人はまだ不服そうで。
まるで駄々をこねるように私を引き止めようとしてくる。
「本当にごめんね…!
次は最後まで遊んでくれると嬉しい」
もちろんその引き止めに応えるわけもなく、私は上手いこと言ってその場を後にした。
もし誰かに狙われる恐れがなかったとしても、瀬野が家にいるため早く帰るつもりだったのだけれど。
「はぁ…」
少し歩いたところでようやくため息を吐いた。
どうして周囲を警戒しながら歩かなければいけないのだ。
これも全部瀬野のせい。
瀬野が私を巻き込むから。
守とか言っておきながら、常に私のそばにいられても困る。