愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
その結果少し危機感を抱いているのだけれど…できれば勘違いであって欲しい。
そう思いながら足を進める…が。
「…………」
重なる足音の数。
意識しすぎているのか、それとも本当につけられているのか。
その上視線も感じるような気がして。
時間は6時を過ぎたところだったけれど、真冬の空は真っ暗だ。
これが夏なら救われたが、今は違う。
「……っ!?」
なるべく人通りが多い道を歩いている中、道路に停められていた車のバックミラー越しにファーストフード店で見た男2人の姿が確認できた。
間違いない、やっぱりつけられているのだと。
急いでスマホを開き、瀬野にメッセージを送ろうと文字を打ち始めたその時。
突然私の目の前に人影が現れた。
思わず足を止めて前を向くなり───
「…っ!?」
「ダメだよ君、勝手に助けを求めたら」
スマホを奪われてしまった。
それは自信に満ち溢れた声で。
やられた、後ろの2人に気を取られて前はノーマークだったのだ。
つまり相手は私をつけていた“3人目”。
その結果後ろ2人の男たちにも両側を挟まれ、完全に逃げ場を失ってしまう。