愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「怖がらなくていいからな?俺たちもできれば川上さんに危害を加えたくないと思ってる。抵抗しない限り、乱暴には扱わない。けど…」
男が私の頬を撫でる。
瀬野と同じ優しい手つきなはずなのに、気持ち悪さだけが募っていく。
「抵抗したら力で押さえつけないといけないな?」
彼の目は本気だった。
私に救いの手は差し伸べてくれない。
「大丈夫、ただ脅しの材料が欲しいだけ。ちょっと恥ずかしい写真を撮って、動画に収めたらすぐ解放する予定だから」
「……っ!?」
そう言って、男は鞄の中からあるものを取り出した。
それは大きな布切バサミで。
「裁縫が得意なやつに借りたんだよな、服の切れ味がいいんだって。まさに冬にもってこいの代物だ」
間違いない、こいつは私の服を切り裂くつもりだ。
そんなのもう私に抵抗の余地はない。
もし逆上したら刺される場合もゼロではないのだ。
「さっきから思ったんだけど、川上さんって驚くほど冷静だな。もっと怯えてくれないといい写真撮れないぞ?」
ゆっくりと恐怖を煽るように、私が着ているコートを脱がされ、深緑のトップスに着込んでいるシャツも捲られる。