愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
それと同時に“ボキッ”と骨が折れたような嫌な音も響いた。
「ごめん、川上さん。
助けるの遅くなって」
瀬野はその叫び声を一切無視して私に自分の上着をかける。
「……別に、自分の上着あるからいらない」
「少しでも他人の温もり感じた方が安心するかなと思って。ごめんね本当、怖かったよね」
瀬野は私の言葉を無視して、ギュッと力強く抱きしめてきた。
途端に安心感が私を襲い、全身の力が抜けかけたけれど。
「もーっ、涼ちゃん!なに雷霆の仲間ひとりを見逃そうとしてるの?ダメじゃん、大切な愛佳ちゃんに手を出した男に制裁を与えないなんて」
「…っ!?」
次に部屋へと現れたのは、光希くんだった。
かわいい顔をしているけれど、気絶した様子の男をひとり、襟を掴みながらズルズルと引きずってやって来たのだ。