愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「事前にわかっていたならどうして止めてくれなかったの…?誰も傷付かずに済んだかもしれないのに」
とはいえ一応良いように言っておく。
あくまで表を崩さないように。
じっと瀬野を見つめる。
ほんの数秒間、瀬野と見つめ合ったかと思うと───
「……ふはっ、やっぱり川上さんには敵わないなぁ」
彼は笑った。
それは“悪い男”の姿だった。
「雷霆が川上さんを狙っていたのは知ってた。だから多分、俺と一緒にいない時を狙うだろうなって」
「……本当に」
最低でクズ以外の何者でもない。
思わず睨みそうになる。
守るって言ったくせに、こんな早々に破られてるとは。
少しでも信じた私がバカらしい。
「ちょっと涼ちゃん!涼ちゃんは敵に変な動きがないかって今日ずっとリサーチしてたでしょ!?そんな言い方したら誤解されて終わるだけだよ!」
「……え」
ようやく敵の男の襟から手を離し、私のすぐそばまでやって来た光希くん。
少し怒った様子で瀬野に話しかけていた。