愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「これでわかったよね、欲深い男がどれだけ危険かって。俺は絶対に川上さんをこんな風に傷つけたりしないよ」
優しい手つきで頭を撫でて、ふっと微笑む瀬野。
この男の思考は歪んでいる。
「すごく怯えて怖かったよね。
大丈夫、俺から離れない限り誰にも襲われないよ」
「……涼ちゃんってなかなかのやり手だよね、気に入られちゃった愛佳ちゃんがかわいそうになってくるよ」
「川上さんを自分のモノにするためなら手段を選ばないかもしれないね」
“かもしれない”ではなくて、“そう”なのだ。
今だって私の恐怖心を煽り、まさに自分がヒーローのように助けに来たのだ。
「じゃあ早く帰ろうか、川上さん。
ちゃんと前は閉めておくんだよ」
「……ん」
「僕の援護はいる?」
「光希はもう大丈夫。
ありがとう、ついて来てくれて」
「お安い御用だよ〜!じゃあね愛佳ちゃん、怖い思いさせてごめんね…僕からも謝らせて」
瀬野なんかより光希くんの方がまともだ。
光希くんは何も悪く無いのに、謝ってくれたのだ。
その後瀬野のバイクに乗り、光希くんとは別れた。
私は瀬野にギュッと掴まり、家へと目指す。