愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「あんたって本当に最低」
「そこまで怒らないで。
俺もちゃんと考えていたから」
「助けるタイミングを?」
「あれ以上触れさせるのは流石に我慢の限界だったな」
カラオケ店の監視カメラでも見ていたのか。
そうだとしたらもっとタチが悪い。
「最低のクズ男」
「川上さん、いい顔してたよ。
翼に頼んで相手のスマホ乗っ取って正解だった」
「……は?」
「あの写真と動画、俺のスマホにデータを送ってもらってから消してもらったんだ」
「……待って、意味がわからないんだけど」
「つまりさっきの川上さんの写真と動画を持っているのは俺だけってことで…」
思わず瀬野の背中を叩く。
最低、本当に大嫌い。
「今すぐ消せ!」
「痛いよ川上さん、暴れないで」
「もう降りる!瀬野なんか嫌い!」
「落ち着いて、大人しく家に帰ろう。
早く服を着替えないと」
「…っ」
そうだ、服。
私のトップスは完全に切り裂かれているのだ。
今降りたところで、私はどうすればいいのだ。
その事実を突きつけられ、大人しく瀬野の後ろに乗る他なかった。