愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜





家に着くなり、真っ先に私はお風呂に入った。
瀬野より先に入るのは初めてだったけれど関係ない。

触られたところが気持ち悪くて、何度も洗い流した。


服を切り裂かれ、写真を撮られて。
危うく脅しの材料にされるところだった。

もし瀬野が助けに来なかったら?
私はあのまま男に家へ連れ込まれていたのだろうか。


そう思うとゾッとして、私が頼れるのは瀬野しかいないのだと思い知らされる。


とはいえ巻き込んだのは瀬野だ、中途半端に私を見捨てようものならそれこそ許せない。

一生恨んでやる、なんて。


なんとか今日のことは忘れようと決め、お風呂から上がる。

切り替えは大事だ。


もしまだ引きずっていたら、それこそ瀬野の思い通りで───


「お風呂、上がった?」
「……っ!?」


近くに人影を感じ、ビクッと肩が跳ねたかと思うと、咄嗟に一歩退いてしまう。

その声は瀬野だったというのに、それだけでも驚いてしまった私はまだ切り替えられていない証拠だ。

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