愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「……怖くない?」
何かを察したのだろう、瀬野が服を掴む私の手を優しく握ってきて。
「怖いに決まってるでしょ…あんたが、すぐに助けてくれないから…」
ようやく零した本音。
こんな風になってしまったのも全部、瀬野が悪い。
「うん、ごめんね」
瀬野が私の上体を起こして抱きしめる。
優しい抱きしめ方だった。
先ほどの不安が嘘のように、やっぱり安心感を覚えてしまう。
「私が一方的にやられてるの見て、笑ってたんでしょ…」
「笑うなんてあり得ないよ。
早く俺が触れたいって思ってた」
「……嘘」
「本当だよ」
私を落ち着かせるようにして頭を撫でてくる。
一方で私は抵抗なんてせず、ただじっとする。
これも瀬野が思い描いていたシナリオ通りなのだろうか。
先ほどの謝罪も、別々に寝ようと言ったことだって全部、私の本音を引き出そうとする罠だったとしたら───
相当な策士男である。
まんまとハマっている今の私に、もう逃れる選択などない。
「ねぇ、川上さん」
「なに…っ!?」
それは突然だった。
瀬野が私の首筋に唇を当ててきたのだ。
「な、何してっ…ん」
一度甘噛みをされたかと思うと、今度は舌を這われてしまう。
その甘さに全身が痺れるような感覚がした。
大胆にも襟元をずらしてくるため、服がはだけてしまう。
「やっ、服伸びる…」
触れられた部分から徐々に熱が帯びていく。
“抵抗”という言葉を忘れてしまう火照る身体。