愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「全部俺で書き換えさせて。恐怖心なんてすぐに払ってあげるから」
甘くて危険な誘い。
拒否したいのに上手く言葉が出ない。
「んっ…あ」
さらには深いキスで思考を鈍くさせられる。
息が苦しくなって酸素を求めれば、舌を絡められ、さらにそのキスから逃げられなくなってしまう。
後頭部と腰にまわされた瀬野の手がないと、その場に崩れ落ちてしまいそうだ。
必死で瀬野の肩に腕をまわして掴まるのがやっと。
ジワリと目に涙が浮かび、なんとかそのキスに耐える。
「せ、の…はぁっ、はぁ…」
「そんな必死になって、かわいい」
流される。
目の前の男に。
それがわかっていてもなお、抗えない。
太ももに手を添えられて。
やらしい手つきで撫でられる。
「…っ」
それからゆっくりと押し倒されて、気づけばベッドに沈む私の身体。
瀬野が私に覆い被さる。
多分、きっと。
この後私は瀬野に抱かれて───
「はい、これで終わり」
「……へ」
横になった衝動で目から零れ落ちた私の涙を、瀬野は指でそっと拭って。
それの終わりも突然やってきた。
「そんないっぱいいっぱいの反応されて、手が出せると思う?もう限界だよね、川上さん」
「……ん」
「逆に燃えて手を出したいところだけど…まぁ、上書きはできたし今はこれで我慢するよ」
瀬野は満足そうに笑う。
その笑みに反省の意思は伝わらない。
ああ、多分ここまでが瀬野のシナリオだったのだ。
やっぱり私は瀬野に敵わない。
「おやすみ川上さん」
私を抱き寄せて。
ふたりで寝る体勢に入る。
先ほどのことがまるで夢だったかのように、部屋は静かだった。