愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
甘い彼のカゲリ



いい匂いに釣られるようにして、私は目が覚めた。


「ん…っ」

ゆっくりと目を開ける。
部屋の明かりはついていなかった。


最初のうちはボーッとしていたけれど、ゆっくりと起き上がった時、ふとキッチンの明かりがついていることに気がついた。

何かいい匂いがするのは、キッチンからか。


それにしても誰がキッチンに───


「…っ!?」


その人物が誰かを理解した瞬間、途端に昨日の出来事が思い出されて。

顔が熱くなるのがわかる。
思わず布団に顔を埋めた。


そうだ、私…昨日男たちに拐われて。

けれど不思議とその時の恐怖心はなく、代わりに胸の高鳴りが止まなくなる。


ドキドキとうるさいのは、全部寝る前に瀬野が私に触れたせい。

少し強引で、けれどその中に優しさも感じられて。
甘いキスにやらしい手つき。

< 201 / 600 >

この作品をシェア

pagetop