愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
甘い彼のカゲリ
いい匂いに釣られるようにして、私は目が覚めた。
「ん…っ」
ゆっくりと目を開ける。
部屋の明かりはついていなかった。
最初のうちはボーッとしていたけれど、ゆっくりと起き上がった時、ふとキッチンの明かりがついていることに気がついた。
何かいい匂いがするのは、キッチンからか。
それにしても誰がキッチンに───
「…っ!?」
その人物が誰かを理解した瞬間、途端に昨日の出来事が思い出されて。
顔が熱くなるのがわかる。
思わず布団に顔を埋めた。
そうだ、私…昨日男たちに拐われて。
けれど不思議とその時の恐怖心はなく、代わりに胸の高鳴りが止まなくなる。
ドキドキとうるさいのは、全部寝る前に瀬野が私に触れたせい。
少し強引で、けれどその中に優しさも感じられて。
甘いキスにやらしい手つき。