愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
深いキスまでされてしまった。
あんなキス、私は知らないというのに。
「……っ、うー」
完全に私の負けだ。
こんなにも乱されたのだから。
目を強く閉じて忘れようにも忘れられない。
「あっ、川上さん起きたんだね。
おはよう」
「……っ!?」
布団に顔を埋めたまま、ビクッと肩が跳ねる。
部屋に戻ってきたらしい瀬野の声が聞こえてきたからだ。
「……川上さん?」
「な、に…」
「どうしてそんな変な格好してるの」
「こ、これが落ち着くの!」
決して布団を離すまいと思い、ギュッと強く握れば。
全てを見透かしている様子の瀬野にクスクスと笑われてしまう。
本当に恥ずかしい、そして悔しい。
「ねぇ、起きてよ川上さん」
「……嫌」
「俺、今日頑張ってご飯作ったんだよ」
「え…瀬野が?」
まさかの言葉に思わず顔を上げる。
その時初めて瀬野と目が合った。