愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「……ふはっ、本当にかわいいね川上さんは」
「う、うるさい…!」

「ほら、そんなに怒らないで。
ご飯食べよう」


ニコニコと爽やかな笑みを浮かべている瀬野に対して、私は腹が立ってしまうけれど。

部屋のテーブルに置かれたご飯を見て、本当に作ってくれたのだと知る。


「……ご飯、ありがとう」


私が寝ている時に、わざわざ起きて作ってくれたのだ。

そこは感謝するべきだと。


「いつも川上さんが作ってくれてるんだから、お礼を言うのは俺の方だよ」

「でも他の家事もしてくれてるでしょ」

「住まわせてもらってるんだから当たり前だと思うよ。これからはたまに俺もご飯作らせてよ、これで料理できるってことが証明できただろうから」


相変わらずニコニコ笑っている瀬野。
どこか嬉しそうだ。

そんな瀬野とテーブルを挟んで向かい合い、腰を下ろす。


テーブルには味噌汁と焼き魚、卵焼きにきゅうりの浅漬けが並んでいた。

本当に料理ができたんだ。

< 204 / 600 >

この作品をシェア

pagetop