愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「なんか、引くくらいベタ惚れだな…そんなに好きなら女遊びはもちろんやめてるだろうな?」
「もちろんです。川上さんの家に泊めさせてもらってるんで、女との関わり自体無くなりました」
「そうか、なら良か…ってならねぇよな、おい待て、一緒に住んでるのか?」
「はい。川上さんの良心で」
不安定な瀬野。
今は嬉しそうにニコニコ笑い、明るい表情で話している。
「まじか…そこまで進展してるのか」
「でも厳しいんですよ川上さん。
家では一切触れるなって条件なんです」
「厳しいじゃなくて当たり前でしょ、女が付き合ってもない男を家に泊めるんなら」
本当は家に泊めること自体おかしいのだろうけれど。
「じゃあ付き合おうよ早く」
「絶対に嫌」
「んー、ケチだなぁ」
「ケチって何よ。誰があんたと付き合うか!」
はぁ、とため息を吐いてから、瀬野の相手をやめて料理を食べる。
「ははっ、面白いなふたりとも」
私たちのいつものやりとりを見て、風雅さんは笑う。
けれど楽しいのは恐らく見物者の彼だけだ。