愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「そういや電話、大丈夫だったのか?」
「あ、はい。敵の近況報告でした」
「ふーん、でも最近怪しい動きをしてんだろ?
雷霆のやつらが」
「俺がこんな感じだから、川上さんを捕らえて脅そうとしてくるんです」
「うわ、それ本気で川上さん迷惑だと思うぞ」
共感しかなかったため、うんうんと力強く頷いてしまう私。
本当に迷惑だ。
なんなら瀬野は、その事態を利用して私の恐怖心を煽ろうとしてきたくらいだ。
「そうなんですよ。
だから、そろそろかなって」
「ついにか」
「はい。相手が大きな動きを見せるのも時間の問題かと。そしたら俺たちも一気に畳み掛けるつもりです」
何の話かまったくわからないけれど。
何やらまた良からぬことが起こりそうだ。
まあ私は巻き込まれないことを願うだけである。
「川上さんが現れたことにより、冷静状態が終わるのか。なんとも気の毒だな」
そんな軽い口調で言われても嬉しくない。
風雅さんは私がどれだけ苦労しているのかを知らないだろう。
「川上さんは俺が絶対守るんで大丈夫です」
「それでも騙し続けるなら必ず川上さんが危険な状況に晒されるだろ?」
「大丈夫です。
逆に向こうは“気づいていない”んで」
なんとなく風雅さんの言葉に不安を覚えたけれど、瀬野は余裕そうな表情を崩そうとはしなかった。