愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
ここで受け入れなければ、私はずっと狙われ続けるのだ。
そっちの方がごめんである。
「わかった、じゃあ…」
敵を油断させるためにアジトに連れていく?
途中まで言いかけたけれど、ふと疑問に思った。
家だと何か危険が及ぶかもしれない、だから安全地帯のアジトに連れていくのならまだわかる。
けれど敵を油断させるためならば、尚更家にいた方が───
「察しがいいね」
「…っ」
なんとなく、瀬野の言いたいことがわかった。
「誰なの」
「言ったら誰に対しても疑心暗鬼になるかだろうから言わないよ」
「…っ、知ってて受け入れてるの?」
「まあね、俺たちにとってもプラスだし」
平気な顔をして言ってのける瀬野。
どれほど頭の回転が速いのだ。
自分たちの族の“裏切り者”でさえ、受け入れているだなんて。
相当頭を使うはずだ。
「知ってる人たちは?」
「一応幹部だけは知ってる。ただ盗聴器とかつけられてたら困るし、アジトでは一切その話をしない約束になってる。あと莉乃も知らないから、莉乃にも言わないでね」
「……盗聴器」
ゾッとする。
そこまで行く闘いなのかと。