愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「でも幹部のみんな、悪い人たちだよ本当。“雷霆の手下”が潜んでるっていうのに、わざと雷霆のことを貶すからさ。その人は毎度毎度怒りに震えているだろうね」
なんとも嬉しそうなその笑み。
その“悪い人たち”に瀬野も入っているというのに。
なんという神経だ、瀬野も裏切り者も。
自分たちを悪く言う瀬野たちに、よく我慢しているものだ。
「でもそろそろ終わりにしようかなって。
川上さんが現れたことで、敵も動き始めてる。
特に雷霆は…黙って見過ごしてられないね。俺の川上さんを平気で狙ってくるんだから」
「…っ、触るな…!」
私の頭に手を置いてきたため、慌てて避ける。
「だから俺たちのアジトに来てもらっていい?」
「……断ったらずっとこの状況が続くんでしょ」
「そうだね、あまり良くないかも。
まあ川上さんが俺の隣に一生いてくれるなら…」
「さ、起きよ。
ご飯は作ってくれてる?」
「うーん、良いところだったのに遮るのは酷いなぁ。
作ってるけどさ」
「ありがとう」
話を変えて、作り笑いを浮かべる。
瀬野はそのような私を見てため息を吐いたけれど、すぐにご飯を出してくれた。