愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「…っ、せ、瀬野くん…?」
考えたところでわからない。
とりあえず今は逃げ道を作りたくて。
目を背け、振り絞る声で彼の名前を呼んだ。
「……俺の心は汚いね」
「えっ…?」
「ううん、なんでもない。川上さんが折れてくれそうにないから、強硬手段に走っただけだよ。無理矢理なことしてごめんね」
彼はゆっくりと起き上がり、同時に私の体勢も元に戻してくれて。
「あのさ、川上さんが良かったらでいいんだけど一緒に寝ない?」
「……え」
一緒に、寝る?
それって同じベッドで、という意味だよね?
先ほどのこともあってか、変な意味に捉えてしまい。
すぐには返事ができなかった。
「あっ、手を出すとかそういうのは絶対しないから安心して…?」
私の反応を見て慌てた様子の瀬野。
先ほどの姿がきっと何かの間違いだと思うことにしたのは、彼も自分を作っていると思いたくなかったからだろうか。