愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
フタツの裏切り
私たちが並んで歩くだけで視線を感じ、注目を浴びているのがわかる。
もし私が地味で暗い人間だったら、妬まれていたことだろう。
とはいえそこそこの人気がある私にすらも、何人かの女子からは妬みの視線を向けられている。
冬休みが明けて早1週間。
私たちが“付き合った”という噂は既に学校中に広まっていた。
すべては相手の男、瀬野のせいである。
冬休み明けの学校初日。
一緒に行くことになった私たちは、案の定周囲から騒がれていた。
私だってもう少し警戒しとくべきだったかもしれないけれど、誤解が生まれることは最早諦めていたのかもしれない。
正直、そこまではどうでもいい。
問題はその後の瀬野の行動だ。
教室へ着くなり、クラスメイトに見せつけるようにして私の肩を抱き寄せたかと思うと、『付き合うことになったんだ』と言った瀬野。
そこからはもう否定の余地もなく、瞬く間にその嘘が広まってしまった。