愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



やはり瀬野は私の上を行く。
本当に腹が立つと内心イライラし始めたその時。


ブレザーに入れてあるスマホが振動した。
授業も終わりかけということで、何となく嫌な予感がする。

気のせいだと思いつつ、念のため瀬野の席に視線を向けると───


「…っ」


瀬野と目が合ってしまった。
最悪だ、見るんじゃなかった。

彼は私と目が合うなり微笑んできた。


たまたま先生が黒板に文字を書いていることをいいことに、自分のスマホを出して指差してきた。

どうやら先ほどの振動は瀬野からの連絡だったようだ。

できれば見たくない。
けれど、無視すればまた何かされそうだ。

諦めてスマホを手に取り、中身を見る。
それは瀬野からのメッセージだった。


【昼休み、一緒にご飯食べよう。
この間行った相談室で待ってる】


誘いのメッセージだったけれど、一応指定された場所が周りの目が気にならない“相談室”ということで、ここは素直に受け入れるのが妥当かと考える。

もし断れば、直接誘ってきそうだ。
それでも素直に従うのは嫌だったため、返信はしない。

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