愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
チャイムが鳴って授業が終わると、まずは沙彩に声をかける。
「沙彩ごめん!今日違うクラスの友達とお昼食べてくるね…!」
実際にこれまでも何度か1年の時に同じクラスだった女子とお昼を食べたことがあったため、沙彩は疑うことなく了承してくれた。
さて、ここからどう怪しまれずに教室を後にしようか。
とりあえず瀬野とタイミングをずらそうと思い、彼の席に視線を向けたけれど、すでにその姿がなくなっていた。
「いつの間に…」
人気者である瀬野のことだ、必ず声をかけられたことだろうに。
これはもう相談室に行くしかなさそうだ。
今日で2回目の相談室。
4階に行けば、やっぱり誰もいなかった。
本当に安全地帯だと言える。
そこから相談室の前に立ち数回ノックすると、中からドアが開けられた。
「来るの早かったね。
返信がないから来るか不安だったんだよ」
「強制の連絡に返信なんていると思う?」
「厳しい返しだなぁ…ま、いいや。中入ろう」
誰かに見られる前に、と続けて私の腕を引く。
なんだか密会をしているかのようだ。