愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「本当に最悪だからね、今の事態。
どうするつもりなの?」
「んー、このまま?」
「ふざけないで。
私の好感度を下げずに別れたことにしてよ」
「嫌だよそんなの。俺はこのままでいいと思ってるし、なんなら“事実”にしてもいいんじゃないかなって」
にこにこと嬉しそうに笑う瀬野に、負けじと睨み返す。
いきなり何を言い出すんだこの男は。
「私が瀬野と付き合うなんて有り得ない」
「俺の彼女になってよ、川上さん」
「…っ、そ、んな軽く言われて受け入れるはずがないでしょ!」
流されるな自分。
あくまで冷静に、冷静に。
「本気だよ、俺」
「私には本気に見えない」
「うーん、でも俺たちって恋人みたいなことたくさんしてるよ?なんなら夫婦…」
「何?家から追い出されたいの?」
「それは嫌だよ川上さん。そんなこと言わないで」
ここまで言わないと黙らないのだから、本当に面倒である。
「そもそもあんたの欲求不満が爆発してるだけでしょ、毎度毎度」
「でも川上さんがキスを受け入れてくれた時は嬉しかったな」
「……っ!?」
そんな1週間以上前の話をまだ出してくるのか。
あれも瀬野に流されただけであり、私の意思ではない。