愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



同じような人間を見つけてしまえば、自分の弱さを見せてしまうかもしれない。


「じゃあ、電気消すね…」

一度立ち上がった私は電気を消し、隅に寄った瀬野の隣で寝ることにした。


いつもは広々としたベッドが、少し窮屈だ。


「……あの、川上さん」
「どうしたの?」

「そんなギリギリにいたら落ちちゃうよ」
「寝相悪くないから大丈夫」


あんなことされたのに、警戒心もなく近づこうとは思えない。

それなら落ちるギリギリにいた方がマシだ。


「……ごめん、怒った?」

「ううん、怒ってないよ。
ただ少し怖かったなって…」


わざと落ち込んだ声を出す。
怖いと思ったのも本当。

ただ急に迫られたから“怖い”のではなく、あの危険な表情が怖いと思ったのだ。

< 29 / 600 >

この作品をシェア

pagetop