愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「ふーん、まあ別にいいけど」
「ありがとう。また家に帰ってから可愛がって…」

「それはいい、私に触れるな。ただそれだけ」
「えー、でも俺たち最近何もしてないよ?」

「どの口が言うんだか。
触れるなって言ってるのに私に触れてくるでしょ」


それは夜、寝る時に限らず普段からである。
明らかに瀬野の自制がなくなってきているのだ。


「それぐらい許してよ。
キスは我慢してるんだから」

「それは当たり前。第一、付き合ってもないのにキスばかりしようとするあんたの考えがおかしいの」

「一度は受け入れてくれたのになぁ…今の川上さん、キスしようとしてもダメしか言わないから、俺そろそろ限界だよ」


さすがにキスまで簡単にされてたまるか。

毎日毎日触れてくるのを我慢してるだけありがたいと思って欲しい。


テレビを観てるだけで寄り添ってきたり、抱きしめてきたり。


別に嫌じゃないからっていうのも、本気で抵抗しない理由の一つかもしれないけれど。

今の気持ちは絶対瀬野には言わないでおく。
言ったら調子に乗ることだろう。

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