愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「あんたの限界なんて知らないから。
私には一切関係ない」
「関係あるよ。川上さんが構ってくれないから限界きてるのに」
「ふざけたこと言ってないで早く裏切り者をなんとかしたらどうなの?何回もアジトに行くの嫌なんだけど」
「あっ、もしかして俺と離れるから?」
「……失せろ」
瀬野のポジティブな思考には本当に呆れる。
どうしたらそのような思考になるのだ。
「少しぐらい寂しいと思ってくれてもいいのに。
この間みたいに」
「全然寂しくなかったけどね。
みんなといると一瞬で時間が過ぎたぐらいだから」
「んー、川上さんは俺が喜ばないことばかり言う」
「事実だからね」
ようやく不服そうな顔をする瀬野。
少しだけスッキリした気分になったのも束の間。
彼の逆襲が始まってしまう。
「ちょっと、なんで隣座るの?
来ないで」
ご飯を食べ終えるなり、瀬野が隣にやってきたのだ。
「不安になったから」
「は?」
「川上さんが離れていくんじゃないかって」
普通に嫌な予感しかしない。
慌てて離れようとするけれど、その前に彼の手が腰にまわされてしまう。
「だから俺を安心させてくれるよね?
川上さん」
「…っ、離れて」
「その願いを素直に受け入れたこと、今までにあったと思う?」
余裕たっぷりの笑み。
何度も同じ状況に陥ってもう学んだ。
ここまできたらもう、私にはなす術がないということを。