愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「どうしてその相手が私なの?
本当に最悪」
「俺も初めての気持ちで戸惑ってる。こんなにも物足りないって思う相手、川上さんが初めてだよ」
学校だというのに、色気すらも漂わせる瀬野に少し警戒心を抱く。
気づかぬうちに狙われて、手を出されかねない。
「そんなに距離とらないで?」
「とるに決まってるでしょ。あんたが危ないから」
「あれ、もしかして俺が危険扱いされてる?」
「それ以外に何があるの」
ずっと前から私の中で瀬野は危険人物に認定されたのだ、警戒して当然のことである。
「そっか…悲しいな」
「落ち込んでるフリしてないで早く行くよ。
光希くんたちを待たせてるんでしょ」
こんなところでのんびり歩いている暇はない。
足早に靴箱へと向かう。
「俺以外には優しいんだ」
「は?」
「いいなぁ、光希と陽翔は。
川上さんに優しくされて」
「なに、優しくされたいの?」
「俺だけ特別扱いして欲しい」
「あんたにしかこんな毒吐いたりしないけど、これは特別扱いになるんじゃない?」
「……嬉しいような嬉しくないような」
「そんなブツブツ言ってないで早く行くよ」
下靴に履き替え、瀬野を呼ぶ。
本当にどうでもいいことで立ち止まらないでほしい。