愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「裏門だっけ?」
「そうだよ」
「ん、じゃあ行くよ…って、また手繋ぐ」
「誰かに見られないかな」
「本当に性格が悪い」
とはいえ変に振り払うことはできず、そのまま裏門へと向かう。
普段滅多に行かない裏門は、変な感じがした。
「あー!やっときたよ愛佳ちゃん!」
「光希くん、陽翔くん!ごめんね、待たせちゃって…」
さりげなく瀬野の手を離すことに成功し、裏門の外で待つふたりの元へと駆け寄る。
「ねぇねぇ、涼ちゃんと手を繋いでたってことはそういうことでいいの?」
「えっ…?」
「もー!付き合ったんでしょふたりとも!
はるぽんも見たよね!」
「この目で確かにな。クソ…涼介の片想いばかりだと思ってたのに」
まだ私を狙っていたのか。
その上幹部のふたりにも付き合っているという誤解をされてしまい、ますます面倒なことになりそうだ。
「残念だったね陽翔。
川上さんは渡さないよ」
「ケッ、どーせ俺は女に捨てられた男だよ」
「はるぽん、そんな投げやりにならないで!
きっといい相手が見つかるよ〜」
慰めている割には楽しそうな声で話している光希くん。
どうもこの状況を楽しんでいるようにしか見えない。