愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「ふたりして俺をバカにしやがって…!
覚えてろよ!」

「じゃあ涼ちゃん、愛佳ちゃんの守り役は任せて!
ちなみに用事ってなんなの?」

「うん、お願いね。ちょっと莉乃から連絡があったから会ってくる」


困ったように笑う瀬野の言葉で、息が苦しくなるのがわかった。


前回もそうだったけれど、息がしにくくなって。
嫌だなって思って。

それから今は───


胸が締め付けられるような感覚がした。


「はぁ!?本当に最低!愛佳ちゃんと付き合ったのに、早速莉乃ちゃんに会いに行くの!?」

「ごめんね、莉乃が苦しんでるみたいだから」

「苦しんでるって何かの病気なの!?
いつも超元気な莉乃ちゃんが!?」

「ううん、精神的なものだよ。
だからこそ俺が行ってあげないといけないんだ」


『だって莉乃は涼介のお気に入りなんだもん…!だから一番大切にされないとダメなの!莉乃が一番なんだよ』

初めて莉乃ちゃんと会ったあの日を思い出す。
本当に瀬野の優先順位で一番は彼女なのだ。


例えそうだったとしても、別に私には関係ないのに。
どうしてこんなにも苦しいんだろう。

< 301 / 600 >

この作品をシェア

pagetop