愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「本当にこればっかりはあり得ないよ涼ちゃん…信じられない。もう行こう愛佳ちゃん!」

「待て待て、俺を置いて行くな光希」
「はるぽんも早く来て!涼ちゃんの顔も見たくない!」

「全く…本当に莉乃が嫌いなんだな」

「大嫌い!あんな女を仁蘭に置いておく涼ちゃんも大嫌い!僕たちを呼ぶくらいだから、何か他に大事なことがあったと思ってた!」


なんだろう。

光希くんが色々言ってくれているおかげもあってか、少し心が軽くなった気がする。



「涼介の大事なことって大抵が莉乃のことだろ?」

「莉乃ちゃん以外にも仲間に何かあったのかなとか、裏の場で乱れがあったのかなとか思うじゃん!」


本当に許せない!と話す光希くんが、ふと私に視線を向けた。


「愛佳ちゃん、嫌なら嫌って言うんだよ。
平然と他の女と会う涼ちゃん、本当に許せない…!」

「私は大丈夫だよ光希くん。
心配してくれてありがとう」


無理矢理笑顔を浮かべて光希くんを安心させる。
それ以上に、無理しないと笑えない今の自分が嫌だ。

瀬野の中で最も優先すべき相手が莉乃ちゃんなだけ。


それなら私のことなんて放っておけばいいのに。
変に離してくれない。

本当に中途半端で嫌だ。

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