愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「もー、こうなったら寄り道しようよ!
ね!はるぽん!」


光希くんは私たちの後ろを歩く陽翔くんに声をかける。

気晴らしに誘ってくれているのだろう。
ここは断らずについていこう。


こんなことで落ち込んでたまるか。

私だけが瀬野のことで頭がいっぱいになるだなんて、決してプライドが許さない。



自分が自分じゃなくなっているようで、本当に嫌だ。
私らしくない。

ここは気を取り直して光希くんに『私も寄り道したい!』と言おうと、顔を上げたその時───


「うっ…、」


隣にいたはずの光希くんが視界から消える。

呻き声のようなものが聞こえたかと思うと、人が倒れたような鈍い音が地面に響いた。


ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
気づけば足が止まり、恐る恐る下を向く。


「…っ、光希くん!?」


信じられないことに、光希くんがうつ伏せになって倒れていた。

慌ててしゃがみ込み、彼の様子を見る。

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