愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
もしその事実を瀬野が知っていて、わざと今日、私を彼と一緒にさせたとしたら───
思わず身震いする。
何という恐ろしい人間だ、瀬野は。
傷つかせないと言っておきながら、易々と私を危険な目に遭わせるのか。
本当にありえない。
「あー、その呼び方やめてくんねぇ?」
ハッと我に返った。
陽翔くんが口を開いたからだ。
「やっとこの日が来たんだ。
お前らに借りを返す日がな」
いつもの軽い調子である彼の姿はそこになかった。
私たちを睨み、見下し、その瞳には復讐心すら込められている。
「どういうこと?はるぽんが…」
「俺は【仁蘭】に送り込まれた【雷霆】の一員だ。そしたら副総長の位もらえるし、みんな俺を信じて疑わねぇし。馬鹿みたいだな本当にお前らって」
「……嘘だ、嘘だ!はるぽんがそんな…」
「嘘じゃねぇよ。だからお前らふたりを捕らえてここにいるんだ。ここで【仁蘭】を潰せば俺は【雷霆】の幹部になれるんだよ、いわばお前らのおかげだな」
光希くんの目に涙がたまる。
もしかして光希くんは何も知らない…?
けれど瀬野が、幹部は全員知っていると言っていた。