愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「じゃあ今からふたりを連れて行きますね」
「……ああ。お前はその女を連れて行け」

「わかりました!」


嬉しそうに笑った陽翔くんが私に近づく。
その顔は勝ち誇ったような、自信に満ち溢れている。


「悪いな、川上さん。
乱暴にしねぇから少しの間大人しく…」

「愛佳ちゃんに汚い手で触るな!この裏切り者!はるぽんなんて嫌いだ!愛佳ちゃんから離れろ!」


その時、光希くんが庇うようにして私の前にやってきた。

それでも両手を縛られているため、自由は利かない様子。


「うるせぇな、退け」
「嫌だ退かない。僕は絶対に…」


次の瞬間、思わず顔を背けたくなるような光景が目の前で起きた。

陽翔くんが光希くんを足で蹴ったのだ。
鈍い音がコンクリートの部屋に響き、光希くんは勢いのまま倒れ込んだ。


「光希くん…!」

「俺はお前たちを絶対に許さねぇ。いつも雷霆を見下しやがって。どれだけお前らに腹が立って、その気持ちを我慢してたと思ってんだよ」


陽翔くんは立ったまま、光希くんを何度も蹴る。
抵抗できない彼はやられるがままだった。


「陽翔くんやめて!」

さすがの私も黙って見過ごしてられない。

光希くんが大怪我を負ってしまうかもしれないと思い、慌てて止めようとするけれど。

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