愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
ただ少し寂しそうな声が聞こえる程度だった。
「今日の瀬野くん、色々おかしいよ…?」
「うん、だから黙っててくれると嬉しい」
「えっ、秘密ごとなの?」
「…黙っててくれる?」
少しだけ抱きしめる力が強くなる。
脅しもいいところ。
「もちろんだよ。
瀬野くんが嫌がることをわざわざしたくない」
本音は面倒ごとにならないため、なのだが。
あえて良いように言っておく。
「……ありがとう」
安心したような声。
これで離してくれるかと思いきや。
「あの、くっついて寝るの?」
「何もせずに夜を越すのは初めてだから…どうしたら良いのかわからなくて」
「えっ?」
わけがわからない。
何もせずにって、いつもは夜遅くまで勉強でもしているの?
「瀬野くんって知れば知るほどわからない人だね…」
「知りたい?俺のこと」
「気にはなる、かな」
「ずるい答え方だね」
知りたいとは思わない。
もし本当に私の知る瀬野が“嘘の姿”だとしたら。
私だってバレてしまう恐れもある。