愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「何度も言ってるだろ?俺は仁蘭の一員じゃねぇんだよ、ずっとお前らは敵だったんだ。だからこの日が来るのをずっと待ってた。全部川上さん、お前のおかげでな」

「…っ」


私の、せい?
私がいるから光希くんは───


「それは、どうだろね…」
「……はぁ?」

「何度も言ってると思う、けどなぁ…雷霆が仁蘭に勝てるなんてありえないって」

「…っ、このクソが!」


光希くんは痛みに顔を歪ませながらも、相手を煽った。

すると彼はさらに怒りを膨らませて光希くんに蹴りを入れようとする。


「……やめて!」

これ以上見ていられないため、咄嗟にふたりの間へと入っていた。


その結果、陽翔くんに背中を蹴られてしまう。

その勢いのまま床に倒れ込んだ私は、コンクリートの地面に頭を打ち付けてしまった。



「…うっ」
「愛佳ちゃん!?」


頭に痛みが走り、一瞬視界がグラリと揺れる。


「“お前”、愛佳ちゃんに何して…」
「落ち着け!」


その時、コンクリートの狭い部屋の中で男の声が響いた。


「……響さん」

「陽翔、その女に手を上げてどうする。
総長の命令を忘れたのか?」

「…っ、すみません…」
「調子に乗るのもいい加減にしろ」


どうやらもう一人の男が陽翔くんを止めたようだ。
さすがの彼も幹部の男には逆らえないらしい。

< 310 / 600 >

この作品をシェア

pagetop