愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「愛佳ちゃん…!血が…」
「…血?」
自力で起き上がった光希くんは多数の蹴られた跡があり、所々に血が滲んでいて痛そうだ。
私の心配よりも自分の心配をするべきなのに。
「ちょっと早く愛佳ちゃんを起こして手当てして!
こんなことしていいと思ってるの!?」
「うるせぇよ、敵に指図するな」
「……っ!?」
陽翔くんはひとりで起き上がれない私の腕を掴み、強引に立ち上がらされる。
頭を打った部分がズキズキと痛み、生温かいものが頬を伝う。
「ほら!愛佳ちゃんの頭から血が出てるの!
早く手当てを…」
「どうしますか、響さん」
「一応血は止めとけ」
「わかりました」
響という男は私をきつく睨む。
その鋭い目つきにビクッと肩が跳ねてしまった。
そんな彼が光希くんの腕を掴み、私の後に続く。
途中に布のようなもので頭を打った部分を押さえられたけれど、その手つきは乱暴で痛みを感じた。