愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「響、そいつは仁蘭の幹部か?」
「はい、そうです」

「どっちも陽翔が捕えたんだってな。上出来だ、この戦いが終わり次第お前は幹部に仲間入りだ」

「…っ、嬉しい限りです!これからも雷霆のために頑張ります!」

「ああ、良いことだ」


明らかに陽翔くんは心酔していた。
雷霆に、目の前の総長に。


「総長、俺は外で見張りしてきます」

「ああ、頼んだ。もし瀬野が来たら脅して捕えろ。多少の怪我を負わせても構わない。響の実力ならあいつにも勝るだろう」

「……それはわかりませんが、出来る限り頑張ります」


生々しい会話が目の前で繰り広げられる。
その後響という男は瀬野を捕らえるため、倉庫を後にした。


瀬野が強いことは知っているけれど、恐らく雷霆の幹部である彼も相当の実力がありそうだ。

ここの総長も認めるぐらいなのだから、本当に大丈夫かと少なからず心配してしまう。


「川上愛佳」
「…っ」

「そんなに瀬野が心配か?もう諦めろ、仁蘭は終わりなんだ。どうせなら瀬野を捨てて雷霆に来ないか?」


どいつもこいつも同じことを言う。
誰がここの一員になるか。

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