愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「何か喋ったらどうだ?」
「総長、さっき俺も言ったんですけど見事に断られましたよ」
「そうか。
まだ瀬野が助けに来てくれると信じてるのか?」
嫌な笑い声。
自信に満ち溢れた声に、先ほどからイライラしてたまらない。
そもそも瀬野は何をしているのだ。
こうなることがわからなかったのだろうか。
裏切り者を油断させると言っておきながら、私と光希くんは敵に捕まってしまった以上変な動きはできないだろう。
一体どう切り抜けるつもりだ。
光希くんも怪我を負って痛々しい状態である。
「…うっさい」
「……あ?今なんか言ったか?」
心の中で呟いたつもりが、つい言葉にしていた。
しっかりとそれを拾った敵の総長から、途端に笑みが消えた。
思わず怯んでしまいそうになるけれど、負けじと相手を睨む。
「あなたなんて瀬野くんに比べたら全然弱いと思うなぁ。だってあなたを見ても怖くないから」
見た目こそ怖そうに見えるけれど。
逆にそう見せているようにも思える。