愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



あんなにも光希くんを蹴ったのだ、仁蘭に思い入れひとつなかったのだろう。

あまりにも傷つく理由が自分勝手すぎる。


「これも全部、作戦か」
「もちろんだよ」

全てを理解した敵の総長が瀬野を睨む。
どうやら負けを悟ったようだ。


「初めから雷霆は負ける運命だったんだよ」
「…っ、お前ら!裏から回って逃げろ!」


倉庫に響き渡る敵の総長の声。

倉庫にいた人たちは全員、瀬野たちの反対側にある閉められたシャッター向かって走るけれど。


突然そこのシャッターが開けられたかと思えば、そこから姿を現したのは仁蘭の幹部である悠真くんと数十人の手下だった。


「裏口の道順も響から情報提供済みに決まっているだろう。もう雷霆は逃げられない」


メガネを掛け直し、雷霆の人たちを鋭く睨みつける悠真くん。

張り詰めた糸が途切れたような気がして。


逃げる気力も失った様子の【雷霆】メンバー全員、負けを認めたようだった。

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