愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「本当にダメな男。私、敵の陣地に連れ込まれて少なからず怖かったんだけど」
「……うん、それは本当にごめ…」
「安心させてくれないの?」
「……え」
悔しいと思うより先に、私を優先しようという考えはないのだろうか。
「早く安心させて」
「…っ、本当に川上さんには敵わないなぁ」
それはこっちのセリフだ。
いつもいつも私の上を行くくせに。
だからこそ逆に弱気で来られると調子が狂う。
瀬野がようやく立ち上がって、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと優しく抱きしめられる。
うん、この感じ。
優しく包み込まれる感じが中々落ち着く。
「まだ痛いよね」
「頭は撫でないでよ」
「うん、痛かったらすぐ言ってね」
「……ん」
瀬野の背中に手をまわして、私もギュッと抱きついた。
彼が弱気のせいで、私が積極的みたいじゃないか。
「それで、もう私が狙われることはないの?」
「……しばらくは。多分、今日のことはすぐ煌凰に伝わると思うから、その後の動き次第だね」
「まだ続くの?こんな闘い」
「今回は上手くいったけど…正直、煌凰とはどうなるかわからない。あそこは一筋縄ではいかない」
「また弱気?本当にらしくないね」
いつもは余裕たっぷりのくせに。
どうして今日はこんなにも弱気なのだ。